恵方巻は今やバーリトゥードだ
- 米ラボ
野見宿禰VS当麻蹴速。
日本書紀に記録が残る日本初のバーリトゥードから早2000年あまりが経ちました。
バーリトゥードとは
日本では古来より、戦で徒手戦闘が行われ、平安時代には相撲として、さらに鎌倉時代には柔術として体系づけられてきました。
明治時代になり日本の柔術家が海を渡り柔術普及に努め、遠くブラジルでも地元の喧嘩自慢の大男たち相手に、彼らにとっては見たことのない技術で圧倒し続けました。
そこで行われた素手のみで戦う徒手格闘技には、細かいルールがありませんでした。
パンチ、キック等の打撃はもちろん、投げ技や関節技、絞め技を含むあらゆる攻撃が認められ、ポルトガル語で「なんでもあり」という意味の「バーリトゥード」の名で呼ばれました。
日本から生まれた柔術は世界に広がり、各地で独自の進化を遂げます。やがて、各地の技術がぶつかり合って技術革新が進み、総合格闘技/MMAとしてワールドスポーツとなってゆくのです。
恵方巻について
そして、恵方巻です。
言わずと知れた、節分に食べるお米の料理なので、米ラボで取り上げざるを得ません。
とはいえこの時期になると、「恵方巻とは?」「恵方巻の由来は?」などの記事があふれて、食傷気味になっているかと思います。
他サイトで調べなくても済むように一応書きますと、
大阪発祥の風習と言われ「節分の夜に、恵方に向かって願い事を思い浮かべながら丸かじり(丸かぶり)し、言葉を発せずに最後まで一気に食べきると願い事がかなう」とされる。
「恵方巻」という名称は、1989年にセブン-イレブン舟入店(広島市中区)担当の本部社員が「大阪には節分に太巻き寿司を食べる風習がある」と聴いて仕掛けたことにより、1998年から全国へ広がり、2000年代以降に急速に広まった。(Wikipedia「恵方巻」より抜粋)
確かに近年は全国区で当たり前のように恵方巻が販売され、コンビニの販売ノルマと食品破棄が社会問題になったことも記憶に新しいところです。
当初こそは、節分には豆まきがあるのに新しいマーケット作りに必死だなと思われていたかもしれません。正直、私は思っておりました。
しかしここまで続くと、恵方巻をいただく機会も出てきたりして、そもそも太巻き寿司は美味しいので、すっかり定番として受け入れられているのではないでしょうか。
ある文化が定番化すると、それに対するカウンターカルチャーが生まれ、お互いがぶつかり混じり合うことで大きなうねりが生じることがあります。
そのうねりが昨今の恵方巻に起こっていることを、みなさまご存知でしょうか。
恵方巻の進化
1989年にコンビニで始まった恵方巻きも、今や大手スーパーやデパ地下で販売されています。
そして駅ナカでも、受取日指定予約販売品として売り出されています。
例えば、JR東日本JRE MALL 2021恵方巻 を見てみます。
まず、寿司の銘店「銀座久兵衛」の恵方巻きがお手頃価格で食べられるところに惹かれます。また、サイトでは具材やジャンルで選べるそうです。
・具材で選ぶ「魚」→ハズレがなさそうで絶対おいしい太巻きです。
・具材で選ぶ「肉」→肉の太巻きはあまり聞いたことがないですが、まあギリギリ恵方巻きでしょう。海苔の代わりに肉巻きになっているものもあります。
・変わり種/スイーツ恵方巻 → 恵方巻とは、節分に食べる太巻き寿司のことをいうはずですが、そのルールを軽く飛び越えて「巻いてあれば良い」という解釈で進化しています。
この、変わり種/スイーツ恵方巻では、まさにノールール、なんでもありの「バーリトゥード」が行われているのです。
気になる選手を紹介します。
▼PAOPAO:恵方まん
エビシューマイと肉シューマイが1本に巻いてあるとのことです。こちらは恵方巻と名乗っていないので、寿司である必要がありませんでした。
定義から外れることなく技術革新が進んだ、美味しい恵方まん、食べてみたいです。
▼フライ de たいめいけん:ワンハンドオムライス(恵方ローストビーフ)
こちらも恵方巻を名乗らずも、声に出したくなるネーミング「ワンハンドオムライス」です。
ローストビーフを卵で巻いたおしゃれな巻物です。たいめいけんのオムライスですので味は絶対間違いないでしょう。
▼シターラダイナー:インド風恵方巻 べジ
おそらくインドに恵方巻はないのですが、スパイシーなご飯をロティで巻いた、恵方巻の新解釈です。
インド人もビックリ、日本人もビックリな逸品ではないでしょうか。バーリトゥードではあるのですが、一流シェフのクリエイティビティに素直に脱帽いたします。
インドで食べる時も今年は南南東を向いて食べるのでしょうか。
▼柿の木坂 キャトル:恵方巻ロール
太巻き寿司の要素である、海苔、シャリ、マグロ、卵、きゅうりに見立てたロールケーキです。寿司の恵方巻のあとに出てきても、別腹で食べられるスイーツ恵方巻です。
スイーツ恵方巻というジャンルも新しくて楽しいのですが、恵方ロールではなく恵方巻ロール、2回巻いてしまったようなネーミングへのこだわりも素晴らしいと思います。
2週間後のバレンタインデーでも食べたくなるような、チョコレート色の生地がまた美味しそうです。
気になるバーリトゥーダーを4例ほど挙げましたが、まだまだ気になる恵方巻だらけです。
色々な文化を吸収して独自の文化を作り上げる——人類が連綿と続けてきた営みです。
伝統的な「節分」がアップデートされている最中です。その過程を楽しめる現在に生きる私たちは、歴史の証人なのです。
そんな今年の「節分」は、明日2/2(火)!
恵方巻、いや巻いてあればなんでも良いのです。お家で食べて楽しみましょう。
ライター:凱風快晴