ケツトジャーナル

丑年に、牛とお米のお話(飼料用米編)

    • 米ラボ

今回も12年ぶりに巡ってきました。

丑年です。

まだ1月ですので、干支である「牛」と「お米」にまつわるお話を書いても良いだろうと思い、それも12年に一度しか書く理由をこじつけられないので、なんと2週にわたってお送りします。

 

さて、牛といえば牧場や牛舎で草を食べているイメージが強いと思います。

それも何度も反芻するので、常にモグモグと何かを噛んでいる様子は、みなさんも容易に思い浮かぶかと思います。

家畜の牛の餌に、最近はお米の利用が増えています。

タイトルにもあります「飼料用米」とよばれるお米です。

 

飼料用米とは

飼料用米とはいっても、もちろんお米ですので、私たちが食べる主食用のお米同様、水田で育てて収穫します。

ただし主食用米と飼料用米に求められる条件は異なるため、飼料用米に適した品種が開発されています。

飼料用米に適するお米の条件は大きく3つあります。

1. 栄養価が高いこと

現在家畜の餌として最も多く利用されているのは、輸入トウモロコシです。

飼料用玄米はトウモロコシと比較して、デンプンや糖類などの可溶性無窒素物(NFE)、粗タンパク(CP)含量がほぼ同等ですので、置き換えが可能です。

もっとも、牛に与える際には消化をよくするために、蒸気圧ぺんや破砕などの加工が必要だそうです。

また、飼料用と主食用の玄米と比較すると、見た目は白く濁っている部分が多く、アミロースが極めて高いです。このようなお米は私たちが食べると、パサパサして美味しくないと感じる方が多いといわれています。

しかし動物にとっては栄養価の高いものの方がありがたく感じるはずで、飼料用米の方がおいしいと思っているのかもしれません。

ちなみに、食味にかかわる成分のアミロースやたんぱく質は、卓上の成分分析計で簡単に測定することができます。

 

2. 生育中、病虫害に強く、倒れにくいこと

味にも見た目にもこだわる必要がないため、丁寧に育てるというよりも、できれば勝手に育ってくれた方が生産者としては助かります。

品種改良の末、ある程度植えっぱなしでもすくすく育つ品種が生まれています。

 

3. 同じ穂数でも多くの米粒が実ること

2.と同様、同じコストで収量が増えると良いです。稲穂や茎葉も大きい傾向にあるそうです。

また、農林水産省が主催となり「飼料用米多収日本一コンテスト」が開催され、生産者の生産技術の向上を図っています。

 

なぜ飼料用米が増えている?

本来は私たちが食べるお米ですが、牛などの家畜に与えている背景には、やはり主食用米の需要の減少があります。

私たちがお米を食べなくなったのは今に始まっていませんが、5〜6年前までは年に8万トンずつ減少していると言われていて、最近は10万トン、昨年は新型コロナの影響で外食需要の低下により22万トンの需要がなくなりました。

それでも、国の安全保障の観点からも簡単に水田をなくすことはできないと思われますので、水田活用に対する交付金で水田を守るとともに、飼料用米の生産にも力を入れていることがわかります。

 

米の消費の減少は、人口の減少がそもそもの原因になりそうではありますが、せめてお米を食べる機会を増やすこと、あとはスーパーなどでみかける「お米で育てました」表記のあるお肉などを食べることによっても、お米や牛をささえることに繋がるはずです。

私も主食用米だけでなく、飼料用米にも意識した食事を楽しみたいと思います。

 

ライター:凱風快晴

参考資料
農林水産省HP「飼料用米関連情報」https://www.maff.go.jp/j/seisan/kokumotu/siryouqa.html
米活用畜産物等全国展開事業HP「お米で育った農産物とは」(2023年9月URLがリンク切れのため削除いたしました。ご指摘いただいた方ありがとうございました。)

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