ケツトジャーナル

イネの枝梗部

    • 米ラボ

ある日、米ラボにお米の籾が持ち込まれました。

写真の通り、粒の一つ一つに茎のような棒状の何かが、長くたくさんついています。

これはなんでしょう。

私はよく口頭で「ひげ」と言っていますが、「枝梗(しこう)」と、「芒(ぼう、のぎ、のげ)」などと呼ばれるものです。

この持ち込まれた籾は長粒種なのですが、こんなに長くしっかりと枝梗が残ったままの籾に遭遇したのは初めてでした。品種の特徴なのか、刈取り方の問題なのか・・・不明です。

ともあれ、このままでは正しい測定は・・・と考えた時、ふと思いました。

「そもそも枝梗がついたままだと、水分の測定に影響を与えるのか?」

測定する際、きれいなサンプルであるに越したことはないのですが、せっかくの機会なので枝梗についての簡単な調査・検証をしてみることにしました。

 

こちらです。

枝梗がついている籾と、除去した籾について、当社の測定パラメータの代表である「水分」を、公定法の「乾燥法」を使って測定し、比較します。

 

通常、籾から枝梗を除去するのに、脱ぼう機という専用の機械が普及しています。しかし当社は脱ぼう機を持っていないため、手動でやってみることにしました。

籾を網袋の中にいれ、もみもみするだけで枝梗が取れるという情報を入手したのです。

当社には籾にぴったりの網袋があります。

こちらの青い網袋は、当社で試料採取用の網として使っており、毎年お米の刈取り時期になると全国各地から籾がこの袋に入って運ばれてくるのです。

青い網袋の大群を見て秋を感じるのが当社の風物詩です。

中に入れてもみもみすること20分ほど・・・



とてもきれいな籾になりました!

中で籾同士がこすれあい、枝梗が取れて網の隙間から勝手に出てきてくれました。

 

これで枝梗ありとなしの籾サンプルが用意出来ましたので、いよいよ水分を測定します。

まず専用の秤量缶に5gの籾を入れます。

左:枝梗なし 右:枝梗あり

 

この時点で長い枝梗が秤量缶から飛び出してしまい、蓋が閉められない事態に。

仕方がないのでこのまま籾を、当社製品TQ-100(https://www.kett.co.jp/products/tq-100/)を使って粉砕します。

しかしこれがとても大変でした。長い枝梗がロールに絡まり、ハンドルが全然回らないのです。それでもなんとか粉砕し、オーブンへ入れて乾燥させ、蒸発した水分を算出します。

 

結果

 

なんと水分に違いはほとんど現れませんでした。

しかし11.6%という水分値は籾にしてはかなり低く、実際の収穫現場では生じにくい乾燥具合です。

今回持ち込まれたこの籾の水分がたまたま低く、乾燥法による水分値に大きな差が生じなかっただけで、収穫したての20%、30%以上の高水分の場合、枝梗の有無が影響を及ぼすようになってくる可能性も十分考えられます。

 

加えて、測定を行う上での操作に大きく問題が生じていることから、やはり枝梗は取るべきものと判断せざるをえないでしょう。

また言うまでもなく、当社の製品においても、基本的には枝梗はしっかりと除去しなければ、正しい結果は得られません。詰まりによる器械の故障に繋がる恐れもあります。

つきましては、最後に改めてお願いしておきます。

 

ライター:さちのか🍓

参考文献
休日通いの田んぼ頼りhttps://mitumaru88.osakazine.net/e489199.html 農文協「イネ大辞典」

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