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近赤外水分計 KB-30《開発秘話》その2

    • 開発秘話

<(その1)の続き

KB-30の新しさ

編:インライン型のNIR水分計はこれまでにもあったんですよね。
野:以前にもありました。最近の器械ですと「KTE-30」という器種がありました。
編:それがリニューアルされた、ということですか。
野:そうです。
非接触測定が前提とされるインライン型で最も問題となるのが、受光部と測定対象の表面を一定に保つことです。
編:製造ラインを一定にすることなんて、できないですよね。
野:はい。もちろん、製造ラインを流れる製品の高さを一定にすることは現実的ではありません。
私たちにできることは、器械の方でその距離変動を吸収しなくてはいけないんです。

 

編:もしかして、それを?
野:解消しているんです。内部の光学系を大幅に改良して、距離変動に強い器械になっています。
カメラに例えると、焦点距離を短くして広角に振ると被写界深度が深くなって、つまりピントが合う範囲が広がりますよね。同じ原理を利用して距離変動に強くしました。

被写界深度が浅い写真(左)と深い写真(右)の例。本器を例えると、右のようにピントが合う範囲を広げたイメージに近い。

 

編:それは大きな特徴ですね。
あと、カタログを見ると防塵防水なんですね。
野:そうです。製造ラインに設置するため機械ごと水洗いされることも想定されるので、防塵防水保護等級IP66を取得しています。これが、苦労しました…。笑

 

保護等級IP66への道のり

編:保護等級IP66というと、どれくらいのものですか?
野:IECやJISで規定されていますが、IPの後の最初の6は防塵度合いを示していて「わずかな粉塵も内部に入らない保護」です。次の6は防水で「製品のあらゆる方向からの暴噴水に対しての保護」というかなりシビアなものでした。

編:試験は専門の施設で行うんですよね。
野:そうです。試験場では、KB-30が粉まみれにされて!水浸しにされて!消防ホースのようなジェット噴射で水をこれでもかってくらい3分間ほど当てるんです。防水等級が一つ低い「5」だと「噴流水」で、それでもホースで水をかけるんだと思うんです。それが「6」だと「暴噴水」ですから、それはそれは親の仇のように水をかけられて…。
実際の試験の様子。本体を回転させながら高圧ホースで水を噴射する。
  そのあと内部を開けて検査するんです。防水設計したつもりでも、いざ開けてみると、なぜかごくわずかな水が入っていて、設計変更を余儀なくされました。
あとは、完全密閉の筐体なので、気圧の変化により内部の結露が発生してしまうこともわかり、それを防ぐ工夫もしたりして、意外と高いハードルでした。
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