赤外線水分計FD-800《開発秘話》(2)
開発者としての喜び
編:1年近くを畑違いの業務経験をして、それで赤外線水分計の開発ですか?
村:いや、その頃社内で、浸炭度計の自動測定ロボットを作れないかという話がありました。
編:浸炭度計?
村:当社ではハンディタイプの浸炭度計という製品を開発していたんです。
浸炭度計「LST-11」(左)と専用記録計(右)
それは、金属に炭素がどれくらい浸透しているかを測定する器械で、ナフサの蒸留施設で炉内の蒸留パイプ表面の炭化を検査していました。
パイプと言っても煙突のような太い柱で、検査の時には炉を止めて10メートル位の高さのやぐらを組んで人がカチカチ検査していたそうなんです。
で、人件費もバカにならないということで、柱を自走できるロボットが作れないか?ということだったんです。
編:検査の省力化、無人化は現在でもよくある話ですね。当時もそのような悩みがあったんですね。
村:そうです。で、社内では無理だという声が大きかったのですが、私は面白そうだとワクワクして「それ、出来ますよ!」と手を挙げました。苦労しながらも、なんとか製品化できて営業担当に大変喜ばれたのを覚えています。
ちなみに価格は、アンプと測定箇所を記録する記録計がついて650万円。非常に高価な器械でしたが、唯一無二の器械でしたのでそれなりに売れて、社内でもそこそこ認められたのかなと思っています。
「LST-11」専用自動昇降装置
編:当時650万円だと、現在の価値では…1180万円位(※)でしょうか。当社製品としては大変高額な器種ですね。(※消費者物価指数による換算)
村:用途も限定的ながら、他にはない器械なので付加価値がつけられたんです。
編:それでいよいよ赤外線水分計ですか?
村:そうですね、ついに、入社前に見かけていた赤外線水分計の開発担当が回ってきました。
実際にはその前に赤外線水分計「F-1A」の製造治具なども設計していたので、初めて触れるという訳でもないんですけどね。その時も治具を作って、製造担当者に感謝されたのをいまだに覚えているんです。
世の中に出回る商品でなくても自分の作ったものが人の役に立っていることがわかると嬉しいものですよ。
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