えっ!? 餅は米から作られていなかった!?
- 米ラボ
今週の金曜日、9月13日は十五夜です。月見だからと言い訳して、甘いお団子を頬張っても許される夜です。
お団子や大福、餅など、日本の昔ながらのお菓子の原料は、お米が多いことに気づきます。
当連載は「米ラボ」ですから、派生して餅のことを書こうと思ったのですが、餅について掘り下げていくうちに信じがたい事実が発覚しました。
なんと、餅は米から作られていなかったのです!
「餅」の文字を漢字のルーツ、中国語として見てみます。
「餅」。中国では「ビン」と言います。「ビン」は、食品のグループです。
「ビン」グループには、饅頭(まんじゅうではなくマントウ/中華まんの皮の部分)や、餃子(チャオズ/ドラゴンボール世代はすんなり読めてしまう)が含まれます。つまり、小麦粉製品全般を指します。
これが、本場の『餅(もちではなくビン)』
ちなみに、小麦以外の粉製品、例えば米粉やきな粉などのグループを総称して「餌(えさではなくアルと読む)」と書くそうです。さらに「餌」の中でも小さく丸めた団子を「円」、「円」の中に餡子を入れたものを「団」と書くようです。つまり、月見団子は「団」じゃなくて「円」ですね。ややこしい。
「餅」の件は、言われてみれば、台北の夜市で人気の「胡椒餅」も周りは小麦粉なので、もち米でできた餅ではないし、「月餅」だって餅ではない。日本で餅が付くお菓子「煎餅」は、正真正銘お米のお菓子ですが、カワラ煎餅は小麦粉だ。
そもそも「煎餅」もルーツは中国の「チェンビン」という小麦粉のクレープ的なものだそうです。そういえば、沖縄の黒糖クレープミックス粉は「ちんびんミックス」として売っています。紛れもなく中国語の煎餅(チェンビン)だった事にいま書きながら気付いてしまいました。
逆に米由来の日本の餅は中国では「餈(ツー)」と呼び、朝鮮では「トッ」になります。日本でも有名な甘辛い餅料理「トッポッキ」は「トッ(餅)」「ポッキ(炒める)」という意味だそうです。
私たちから見たら餅なのに、「餅」ではなく「餈」
餅がついても必ずしも米からできている餅ではなく、小麦からできているのが日本以外の常識でした。反対に、来日する中華圏の方々にとっては、餅と書いてあるのに米製品であることに驚くかもしれませんね。
ライター:K.OKAWA
参考文献:「増訂米の文化史」篠田統(1980, 社会思想社)